ルーツは和菓子店。純喫茶からカフェへ、アニメの聖地にも

店主 和菓子職人だった祖父が、結婚してから祖母と始めた和菓子店がここの前身だと聞いています。自分が物心ついた頃には二代目である父がメインで切り盛りしていて、和菓子の他にケーキやシュークリームも売るようになっていました。そして1972年に「喫茶モカ」の名前で喫茶店をスタート。自分はまだ子どもでしたが、店がおしゃれになって、なんだかうれしかったことを覚えています。
私は高校卒業後に東京の製菓専門学校に行き、レストラン勤務を経て、この店で働き始めました。それからは父、母、自分という体制で、自分が結婚して妻が加わってからもしばらくは父が現役でした。
店を改装して「café moka」になったのが、2008年くらいのこと。昔は純喫茶でしたが、徐々に女性のお客さんが来てくれるようになって、カフェに。振り返ると、時代やお客さんに合わせて変わってきましたね。
奥様 そして最近は、2018年に放映された佐賀県が題材のアニメ「ゾンビランドサガ」の舞台のひとつにも選んでいただき、ファンの男性も来てくれるようになりました。「聖地巡礼」をきっかけに当店の味を好きになってくれる方も多く、うれしいですね。

材料は全て手作り!期間限定「いちごパフェ」が人気

店主 毎年12月~5月に提供している「いちごパフェ」を始めたのは、1980~1990年頃かな。母の実家でイチゴを栽培していたので、それを使ったメニューを発売しようと考えたのがきっかけです。
パフェの中身は、生クリーム、アイスクリーム、イチゴのゼリー、スポンジケーキ、カスタードクリーム。これらは全て手作りしています。もともと菓子店でしたから、何でも材料から作るのは自分たちにとって当たり前。ずっとやってきたことの積み重ねですね。
奥様 お客さんがすごく多い時は、営業時間の途中でアイスクリームを切らしてしまうこともあります。「買ってきていいですよ」なんて言われたこともあるのですが(笑)手作りだと話すと驚かれて「だからここの味って、他のお店と違うんだね!」と納得してくださったりします。
メニューは、夫がいろいろアイデアを出し、年月を重ねるごとに進化させています。だから、20年前よりも10年前よりも「今のいちごパフェ」が一番おいしいんですよ。昔から提供しているぜんざいも、長い常連さんが「お父さんの時とはまた違う味で、今が一番おいしいね」と言ってくださったりしてね。
店主 もちろん基本は変えませんが、新しいアイデアを加えたり、時代に合わせて変化させたり、評判がよくなかったら戻したり(笑)その繰り返しで、いつ来てもおいしいものを食べてもらえる店であり続けたいと思っています。

モカの名とアットホームな雰囲気を残せたらうれしい

店主 従業員がいたこともありますが、今は夫妻2人で営む規模感がちょうどよいというところに落ち着きました。長く続けていくには、いずれは時間を短くしたり、規模を小さくしたりするなど考えなければならないですね。あと10年はできるとして、20年はキツイかな? 後継ぎについては考えたこともなかったけれど、この店が完全に無くなってしまうのは寂しい気もします。もし出会えるとすれば、一緒に気持ちよく働いてくれる人、真面目な人がいいですね。料理に関しては、今の味に縛られずその人らしくやってもらえたらいいけれど、モカという名前と、このアットホームな雰囲気は残っていったらうれしいです。
奥様 ありがたいことにたくさんのお客さんに来ていただくのですが、忙しさがピークになると体力的には大変で(笑)そんな中、お客さんが「無理しないでね」「休みながらでいいから続けてね」と言ってくれます。私たちの代で終わるものだと思っていたから、もし継ぎたいという人が来てくれても複雑な気持ちになるかも……でもせっかくだから、誰かに受け継いでいくのもいいのかもしれませんね。

住所:嬉野市嬉野町大字下宿乙2179-1
電話:0954-43-1332
営業時間:11:40~15:00/18:00~20:30
休み:不定休
駐車場:あり