昭和の頃からの名店。佐賀市の嘉瀬町に移転し三代目が継承中

創業者は私の父のおじで、満州からの引揚者でした。戦後、佐嘉神社そばの屋台から始まり、70年ほど経つと言われています。私は昭和40年代の学生の頃から手伝っていましたが、当時、本店は佐嘉神社の境内地にありました。中央本町や佐賀駅そばなどにも店舗があって、包み手さんの一部は住み込みで働いていたことも思い出されます。佐賀市嘉瀬町の現店舗は、昔、工場として使っていた建物です。街の店舗でギョーザが足りなくなると、こちらからも運んでいました。一時期、ギョーザを包む機械を導入しましたが、今はもう使われていません。
おじから父の経営へと移り、中央本町の店舗で営業していた頃、父が急逝。私はもともと太良町で農業をしながらも店を手伝っていたことから、継ぐ決心をしました。一通りの経験をし、覚えていたギョーザ作り。微妙に違うところはあると思いますが、それでも来て満足していただけるということは、昔の味に近いのでしょうか。2011(平成23)年、旧工場に店舗を移し、私ができる範囲で営業しています。

パリッと焼き上げたギョーザをネギたっぷりの酢醤油と香ばしいラー油でいただくスタイル

中国では焼いたギョーザは「余りもの」と言われることもあり、主流ではないようですが、日本ではよく食べられていますね。当店でも昔から特に親しんでいただいているのは「焼ぎょうざ」(450円)です。ギョーザは皮から手作り。合いびき肉やキャベツ、タマネギを炒めた餡を薄めの皮に包み、パリッと焼き上げます。季節によって野菜や皮の水分量などが変わるので調節したりと、かかる手間も多いですね。ニンニクは卓上に用意していますので、お好みでどうぞ。酢醤油に刻みネギをたっぷり入れて、特製ラー油を添えて食べるのも一つの特徴です。ラー油は唐辛子の粉を焼いてごま油と合わせ、手作りしています。また、ギョーザのお持ち帰りサービスも長年実施。焼いたものと冷凍餃子のどちらも対応し、他県からの帰省客のご利用や自宅で家族と食べるために購入される方が多いですね。もう一つのメニュー「水ぎょうざ」(450円)も、当時と同じようにスープで提供しています。

ゆるやかに営業を続ける中、新しい来店客の兆しも。

移転したことをご存じない方も多く、森林公園の前にあるのを見つけて驚いて入ってきてくださる方もいらっしゃいます。当初は継ぐことに不安もありましたが、お客様に「懐かしい」「おいしい」と目指して来ていただけることをうれしく思います。最近は、若い方のご来店も増えてきました。
後継者についてはまだ決めていません。運命的に店を引き継いだ私も、年を取るにつれ、「このままだと、当店のギョーザの味が途絶えるかもしれない」とふと案じるようになりました。この店、この味を残せるように極力頑張っていきたいと思います。

住所:佐賀市嘉瀬町荻野237
電話:0952-23-6869
営業時間:11:30~20:00
休み:火曜
駐車場:あり